仲町ゆめ食堂
会場名 | 仲町ゆめ食堂 |
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所在地 | 足立区千住仲町49-11 2階 BUoY CAFE |
アクセス | 「北千住駅」出口1から徒歩6分、西口から徒歩8分 |
開催日時 | 原則として毎週月曜日、16:00~19:00 |
料金 | 大人300円 (子供無料) |
アートスペースで子ども食堂
印象的な大きなテーブルとベンチ。趣味の良い、様々なデザインの椅子。それぞれのテーブルには花が飾られていて、カウンター上にはドライフラワーのスワッグが吊るされている。大きな窓からはまだ西日が入ってくる。決して派手ではない外観からは想像していなかった内装で、おもわず「素敵」と呟いた。
訪れた場所は、2017年にオープンしたアートセンター「北千住BUoY」。2階はカフェとギャラリー、地下は音楽や演劇等が上演されるスペースになっている建物だ。
後で調べてみたら、2階の内装は佐藤研吾さんという若手建築家の手によるものだそう。
どうりで「素敵」なわけだ。
ここで開催されている子供食堂が『仲町ゆめ食堂』。
2018年6月11日の初回以来、毎週月曜日に開催され、通常50名くらい。多い時だと70名の方が利用される規模の大きな子供食堂だ。
運営しているのは、ビルのオーナー代理人、西田宗由さん。そこに、パフォーマンスユニット『バストリオ』を主宰するアーティストであり、ギャラクシティ 足立区こども未来創造館にて「こどもえんげき部」の講師も務める今野裕一郎さんが同士として名を連ねる。お手伝いには、千住小学校のPTAの会長さんや、BUoY代表・芸術監督である岸本佳子さんのお母様など、色々な人が加わるのだそう。
実はこの子供食堂の取り組みは、アートスペース立ち上げの際に作製した企画書に盛り込まれていた内容とのこと。
「BUoYの立ち上げは子供食堂ありきでした。西田さんの夢だったんじゃないかな」と、岸本さん。一方、西田さんも岸本さんについて「彼女がいなかったら実現できていないよ」と仰っておられて、北千住BUoYが、場を提供する以上の考えで「仲町ゆめ食堂」に取り組んでいらっしゃることが伝わってきた。
特殊なアートスペースという空間に人を集めるきっかけとなり「多くの地元の方が集まって下さるとても貴重な企画」になっている。
2升のご飯を炊いて、天気をみながら、来る人を待っている。
メニューは、カレー、シチュー、ハヤシライスを交代でメインに、野菜の煮物や、お浸しなど副菜がいろいろと加わるそう。特徴的なのは、ご飯。玄米と三分つき米が用意されている。
私が4歳の息子と伺った日のメインは野菜たっぷりのクリームシチュー。ごはんは、玄米かサツマイモご飯を選ぶことができた。私は玄米を、子供にはサツマイモご飯をチョイス。もちもち玄米は噛み締めるほど味わいがあって、身体がよろこんでいる感じ。
野菜の汁物もお出汁のしみた里芋や人参の美味しさが格別だ。
子どもも美味しそうにご飯もおかずも完食!果物も2種類もいただき、大満足していた。
西田さんご自身が普段の食事でも野菜をたっぷり召し上がられるそうで、「私が普段食べているもの」を、と考えられているそう。
サイドテーブルにはいろいろな副菜が並ぶ。常連組は新しい副菜が出てくるたびに「唐揚げ取りに行こう」「あ、バナナがあるよ」なんてお話ししながら、列を作られていた。(そんなわけで、サイドテーブルの副菜写真……人気の程が伝わる……。)
集まっていらっしゃる皆さんの中には、お友達同士のグループも。私たちと相席になった赤ちゃん連れのお母さんは「児童館で噂に聞いて、ここに来るようになった」と仰っていた。ワイワイとお話ししつつの食事は、いっそう美味しく感じられるだろう。
西田さんはそんな様子をいつも見守っておられるようで「笑い声で溢れている様子は、見ていて、良いよね」と。今後のことを伺うと身体が続く限りは続けたいとの心強い返事がかえってきた。「そこそこの年齢まで来たから、多少、恩返しはしなきゃなってね」と笑顔で話されるのが印象的だった。
期せずしてアートと出会う。シュチュエーションの贅沢さ。
芸術監督の岸本さんからは、アートスペースだからこそのお話しも。
「この子供食堂事業は、アーティストの理解を得られているからこそできること。」とお話しくださった。同フロアのギャラリーでの展示とタイミングが重なることもあり、私が取材にお伺いした日も展示がされていた。飲食物を自分の作品の近くに持ち込まれることを、難なく許容できる寛容さに助けられているとのこと。
オーストラリアのアーティスト、ヘザー・B・スワンが来日し展示を行ったタイミングでの、子供食堂利用者の子供たちとのやり取りをお話しくださる様子には、アーティストへの敬意と北千住BUoYの取り組みへの自信を感じて、地元にこのアートスペースがあることが、私も嬉しかった。
『仲町ゆめ食堂』は、「素敵」と何度も言いたくなる場所だ。
毎週月曜日の16時から、西田さんとお仲間の皆さんが食べる人たちの笑顔をまっていてくれる。大人300円、子供無料とは思えない贅沢体験をぜひ味わってみてほしい。